家族歴と拡張型心筋症の予後との関係<論文掲載報告 裏話まで>

頑張って書いた論文がCirculation Journal に掲載になったので、報告をしたいと思います。苦労したことと、裏話的な事もまとめます。

目次

研究内容

タイトルは

”Prognosis and Clinical Characteristics of Dilated Cardiomyopathy With Family History via Pedigree Analysis”

です。

問診で家系図を作成し2親等以内の拡張型心筋症の存在が予後不良因子であるという内容です。

500例以上の症例をエントリーし前向きの研究を行った事で信頼度が高いです。

さらに、全例心臓MRIで評価し、家族歴を有する群が効率にびまん性の遅延造影を有し、心筋の線維化が進行していることを示し、結果の信ぴょう性を高めています。

問診だけで判断できる指標であり非常に汎用性が高く、医者が拡張型心筋症を診察する際に役に立つ事を願っています。

苦労した点

・データ入れ

データ入れはしんどい作業です。

500例以上の症例をエントリーしたわけですが、それぞれの症例の臨床データは、電子カルテを開けて、1例1例確認しました。

生年月日・身長・体重などの基本的な情報から採血結果・心電図・心臓MRIなどの検査結果まで1つ1つ確認し入力するわけです。

1例20分かかったとしても

20×500=10000分(167時間)。

途中で確認すべきことも追加で出てきて、見返すこともあるので、さらに時間がかかります。

データ入力は最初に乗り越えなくてはいけない山で、体力勝負です。

臨床研究は泥臭い作業です。

途中で1例のみデータが違う事があり全部の解析をやり直しに。。

これは、あるあるだと思いますが、解析をすべて終え、論文を一通り書き上げたところで、データの不備が見つかりました。

1例でも症例が抜け、症例数が変化すれば、すべての解析をやり直す必要があります。

心が折れそうになり、つらい事ですが、無心でやり直すしかありません。

研究は着実に1つ1つ積み上げていく事が大切です。

・査読~遺伝子検査について~

米国心臓病学会で発表した際にも質問されましたが、遺伝子検査を実施していないことについて、査読者から突っ込みがつらかったです。

日本では海外に比べて倫理的な理由もあり、遺伝子検査はあまり普及していませんが、海外では家族歴をターゲットにする研究では遺伝子検査まで施行されていることが当たり前のようです。

実はCirculation Journal に投稿する前にいくつか海外の雑誌に投稿しましたが、遺伝子検査は必要であるとのコメントをもらい不採択になりました。

そのたびに形を修正し、納得できる研究に仕上げていきました。

査読に回答する事は労力を要しますが、論文の質がさらに良くなる機会なので、ありがたいです。

裏話

米国心臓病学会で発表を行った研究ですが、学会投稿を決めたのは抄録締め切りの前日でした。

夕方から既報を調べ上げる事から始め、研究の組み立てを考え、解析を行いました。朝5時までかかりましたが、何とか投稿し、採択される事ができました。

自分で考えた組み立てて国際学会に通した初めての研究だったので非常にうれしかったことを覚えています。

時には、締め切り目前で死に物狂いでやることも大事です!

興味がある方は、ぜひ、ご一読を↓↓

Prognosis and Clinical Characteristics of Dilated Cardiomyopathy With Family History via Pedigree Analysis

DOI https://doi.org/10.1253/circj.CJ-19-1176

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ABOUT US

CHIROME
大学医学部卒→研修医→循環器内科・医学博士→宇宙医学の研究のため2年間海外留学(就職)。日々直面する色々な問題と格闘した軌跡を共有します。 サーフィン・バスケットボール・登山が好き。