目次
①体力の正体とは?運動耐容能を規定する因子について解説
体力とは科学的には漠然とした言葉ですが、医学的には運動耐容能と表現でき、高いほどたくさん運動する事ができ、低いとすぐにつかれてしまいます。どれだけの運動できるかの指標です。 そして、運動耐容能は、最大酸素摂取量(max VO2)として数値化されます。 では、どれぐらい運動できるかはどこ臓器の影響を受けるのか?
それを教えてくれるのが以下の公式です。
【Fick の法則】
VO2=Hb x CO x (CaO2-CvO2)
運動耐容能=ヘモグロビン濃度 x 心拍出量 x(動脈内の酸素含有量―静脈内の酸素含有量)
よって、上記の式から運動耐容能には
血中のヘモグロビン濃度
心臓
肺
筋肉
が大事な事が分かります。日常生活している感覚と一緒ですね。
ですので、体力の衰えは心機能の低下・肺機能の低下・筋肉での酸素消費効率の低下・ヘモグロビンの低下(貧血)で起こります。
②体力が衰える原因は?これ以上動けないっていう状態を生理学的に解釈してみます
Fickの式から考えれるに、人がこれ以上運動できない、っという体力の限界に達するのは以下のような状況だと思います。
1)心臓の働きが限界になる まず、A-V O2が最大となりその後、心拍出量が最大に達する事でVO2が最大になりそれ以上運動できなくなると考えれる。
健康な人では運動耐容能を規定するのは心機能です。
ちなみに、心拍出量=収縮期容量(1心拍での拍出量)x脈拍 ですが、
脈拍はみんな同様にあがるので、体力の真の規定因子は収縮期容量(1心拍での拍出量)です。 残念ながら年齢とともに心機能も徐々に衰えていきます。
1か月ほどの短い時間で急に体力が落ちた時は、狭心症など心臓疾患が隠れている可能性はあります。
2)肺機能が限界になる 換気効率が悪いためすぐに呼吸回数が上がっていく。
呼吸回数が多すぎると死腔の割合が高くなり十分なガス交換ができなくなる。
すると、動脈内の酸素含有量が低下し始め、VO2が低下する事になり、それ以上運動できなくなる(CO自体はまだ上がる余地があるので脈拍の余裕がある)、と考えれる。
心機能よりも肺機能が限界に達する事は肺疾患を持っている人以外基本的にはありません。
肺疾患での息切れの原因として
①SpO2 (動脈血酸素飽和度)が早期から下がる
②脈拍があまり上がってないのに息が苦しくなる
などがあります。
煙草を吸っていたり、塵肺を吸うような仕事をしていた方は隠れた肺疾患がある可能性があると思います。
COPDなどの肺疾患は心臓疾患よりも比較的緩徐に進みますが、同年代の人と比べて体力の自信がなく、肺を悪くするような心当たりがある人は病院に相談したほうがいいかもしれません。
3)筋肉の機能が限界になる
筋肉が廃用し筋肉量が少なくなっているので、必要な酸素量が小さい
VO2の受け皿が十分でなく、VO2はある程度までしか上がらない。と考えれる。
これはいわゆる、運動不足による筋肉の萎縮が原因です。
年齢を重ねるだけで、筋肉は衰えやすくなります。
タクシーの移動が多い若い女性などでも筋肉の萎縮があり、体力が衰えていることも問題と考えれています。
③体力を上げる・維持するためには?
体力を維持するには、心機能・肺機能・筋肉の機能のどれかを上げればいいわけです。
肺機能は基本的に上がりません。
若い健康な人は前述のように、心機能が体力の規定因子であるため、心機能を鍛えるべく、負荷の高い運動をする必要があるでしょう。
よって、高い心拍数がある程度続く運動がいいのではないかと考えられます。
高齢になった人はどうでしょうか。
負荷の高い運動のため、ダッシュやジャンプなどを行うと骨折のリスクが高まると思います。
筋肉の機能を考量させることを意識された方がいいと思います。
30分ほどの散歩を週に2回ほど行う事で、抹消循環の機能や炎症の軽減を含め、筋肉の環境が良くなることが知られています。
散歩など軽く汗ばむような運動を行い、筋肉の環境を整えることを意識されるといいと思います。
<まとめ>
・運動耐容能(体力)は心機能・肺機能・筋肉での酸素消費効率(・もちろんヘモグロビン)によって規定されます;【Fick の式】VO2=Hb x CO x (CaO2-CvO2)
・体力をつけるためには:若い健康な人→心臓を鍛える。高齢になったら→筋肉の環境を整える

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運動科学部・生理学科に留学中の循環器内科です。特殊環境医学・運動生理学の研究に従事しています。 この記事では以下の内容をまとめます
①体力の正体とは?運動耐容能を規定する因子について解説
②体力が衰える原因は?これ以上動けないっていう状態を生理学的に解釈してみます
③体力をあげる・維持するためには?