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目次
自己紹介と家族の構成について
私は元々循環器内科医で日本の病院で10年勤務していました。
現在ヨーロッパ・オーストリアの大学で教員として仕事をしています。
大学に雇用されているため大学が契約している医療保険の被保険者で家族もその傘の中に入っています。
2020年に妻は日本で第一子を帝王切開で出産し、
2021年に第二子をオーストリアで帝王切開で出産しました。
いずれの出産時にも病院にいましたし、毎日病院にお見舞いに行っていました。
2年という短い期間に、妻の帝王切開を日本とオーストリアで経験したので、
医師の視点から日本とオーストリアの医療の違いについて考察したいと思います。
海外での妊娠中の通院について
オーストリアの私が住む地域では、出産する病院と通院する病院は別です。
出産する病院は市で2か所しかありません。
通院する病院をまずは探しました。
保険によって無料になるところとそうじゃないところがあり、少しややこしいです。
- 家の近くである
- 英語で対応してくれる
- 保険で無料になる
という希望にあう病院を探しました。
3か所ほど連絡するも、どこも今患者が一杯なので受け入れができないと断られました。
幸運な事に同僚が妊娠中で、そこの病院を紹介してもらう事ができました。
バスを使って合計40分ほど通院にかかりますが、そんなところで固執しては、選択肢はなくなります。
Pickyになりすぎないことは海外でのコツだと思います。
日本と違って希望する病院に行けるわけでない
ある程度条件が揃ったらよしとして、通わせてもらう
通院は日本よりも頻度は少ないです。
エコーもたまにしか当ててもらえませんし、エコー画像をくれるのは3か月に1回ぐらいでしょうか。
2カ月に1回の受診から最後の方は1か月に1回に代わります。
出産をする病院への入院日が決まったのは20日前。
予定が空いているかハラハラしていましたが、大丈夫でした。
出産する病院に受診
出産入院の前に一度外来受診をします。
紹介状も何もなく、母子手帳の情報を元に問診されます。
自然分娩にするか聞かれましたが、
第一子が帝王切開だったので、第二子も帝王切開にする事に決めました。
ヨーロッパでは自然志向が強いので、たとえ前に帝王切開を経験していても、
その次の出産を自然分娩にすることが多いようです。
友達にも通院する病院・入院する病院の先生にも「自然分娩にしないの?」と聞かれました。
日本の婦人科の知人に聞いたところ、
「日本では帝王切開後に自然分娩するのはチャレンジャー扱い」と言われて、
帝王切開に決めました。
日本人の赤ちゃんのほうが頭が大きいですし、
日本人には帝王切開後の自然分娩は危険なのかもしれません。
そして、採血・心電図などの術前検査をされることなく帰されます。
むしろ、麻酔科に自分で連絡するように指示されます。
患者が麻酔科に連絡って???て感じでしたが、
麻酔科に連絡→麻酔科受診→麻酔科で術前検査 でした。
妻が帝王切開で出産した時の入院生活の実際
入院日のスケジュールは以下の通りでした。
7:30 | 入院 |
8:00 | 手術室入室 |
8:30 | 出産→カンガルーケア |
9:00 | 手術終了 |
9:15 | リカバリー室に。 |
9:18 | 初乳 |
12:00 | 病室に移動:2人部屋 |
17:30 | 歩行練習 |
23:00 | 歩行練習 |
なんと、病院について30分で手術室に入室。そのまま猛スピードで出産!
帝王切開でも立ち合いが可能で妻の頭の方で付き添っていました。
術場は覆布でカバーして見えません。
赤ちゃんの最初の泣き声を夫婦そろって聞くのは感動的でした。
こちらでは腰椎麻酔で手術後痛み止めは静脈注射で必要時に投与されました。
日本では硬膜外麻酔で手術を受けたので、術後当日は日本の時より痛そうでした。
入院2日目には点滴と尿道バルーンが取られました。痛み止めは飲み薬のアセトアミノフェンに代わります。
その後傷の様子を見るために入院継続。
入院5日目に退院になりました。
医師の視点から見た、オーストリアと日本の医療の違い
日本での帝王切開入院、オーストリアでの帝王切開入院で感じた違いをまとめます。
手術の質 | むしろオーストリアの方が上手でした。 第一子の出産のときの帝王切開より2,3倍手術時間は短く、 術後の貧血もありませんでした。 妻の手術時に術場にいたので観察できましたが、 研修医時代に帝王切開の手術に入った時と比較しても 麻酔はスムーズで手術は早かったです。 傷も日本の術後のものよりもきれいです。 |
入院期間 | オーストリアががぜん短い 帝王切開だった妻の入院は 日本では術後10日間 オーストリアは術後5日間 オーストリアで自然分娩は1泊2日で退院です(笑) |
担当医 | 日本は担当医が決まっていて、病室まで見に来ますが、 オーストリアでは担当医はなく細かく役割分担されているようです。 外来医師・手術をする医師は違いますし、入院中は毎日違う先生が来ます。 |
母乳について | 日本では母乳でなくてもミルクも十分受け入れられていますが、 オーストリアでは母乳信仰が強いです。 夜泣きした時に夜間看護師さんがミルクをあげて、休ませてくれる事はありません。 この点は日本よりも辛そうでした。 |
痛み止めについて | 海外では日本より痛みに敏感に反応するというイメージがありましたが、 点滴ラインは術後翌日に抜かれて痛み止めの効力はあまり強くない内服のアセトアミノフェンでの対応に代わりました。 我々が持っている海外のイメージはアメリカの影響が強く、 ヨーロッパは自然志向が強いので、痛み止めはむしろ日本の方が使うのではないでしょうか。 |
術後の食事 | 日本では帝王切開後はガスが出るまで絶食、その後10倍がゆからは段階的に開始でしたが、 オーストリアでは術後3時間後の昼食からパスタでした。まったく気にしない。 |
費用 | 私はオーストリアで雇用されており社会保険によって医療費は無料になりました。 子供手当もあるので出産に際して家計が圧迫されることは全くありませんでした。 |
まとめ
海外で出産するからと言って、手術の質が落ちたり、危険性が増したりすることはありませんでした。
皆さん親切で安心して元気な子供授かる事ができました。
何かご質問があればお答えしますのでコメント下さい。
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